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1つの不動産に4つの価格

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2023.05.08

土地の価格というと、住宅販売や不動産広告に掲載されているものを思い浮かべる人が多いと思います。これらは景気や社会情勢などの影響で随時変動するため、目的に応じて「複数の価格設定」がなされています。これは「一物四価(いちぶつよんか)」といい、一つの土地に公的に算定された価格と、実際に売買する価格の4つが掲示されているのです。

 

4つの価格とは

 

土地には複数の価格がある

「公示地価」 「相続税評価額(相続税路線価)」 「固定資産税評価額(固定資産税路線価)」 は 『公的価格』 と呼ばれ、政府や地方自治体が納税額の算出をスムーズにするために国土交通省より設定された公的な指標です。

上記に「実勢価格」を加えた4つの価格が「一物四価」として、土地価格の評価基準に用いられます。

 

公示地価の特徴

 

一般の土地取引の指数や公共事業用地を取得する際などに、国土交通省が地価公示法に基づき設定する土地価格のひとつで、その目的は以下のようになります。

 

<公示地価の設定理由>

①一般の土地取引に指標を与え、適正な地価の形成に資するため

②公共の利益となる事業に供する土地に対する適正な補償金の額を算出するため

 

これらは毎年3月下旬ごろ国土交通省より発表されます。具体的には、その年の1月1日における全国の標準地(都市計画区域内中心)の1㎡当たりの価格で、建物がある場合であっても更地として評価されます。

また、国土交通省とは別に、各都道府県の行政が土地の価格を設定するケースもあり、これは公示地価に対して「基準地価」と呼ばれます。都道府県が土地に値段をつける場合は、「国土利用計画法」に基づき選定された基準地(都市計画区域外や林地も対象)をもとに査定されます。毎年9月下旬ごろ、各都道府県知事から発表されることが通例であり、公示地価の補完的役割を果たしています。

これら2つの公表時期の差から、土地価格の動向を知ることができます。しかし、一定の土地を対象として査定するため、価格を知りたい土地が(標準地や基準地から)離れた場所に存在する場合は参考にならないこともあるので、その際は実勢価格を確認しましょう。

 

相続税評価額(相続税路線価)の特徴

 

国税庁が 「贈与税」 「相続税」 などの課税額を算出するために用いる価格指標で、毎年7月初旬ごろに発表されます。相続税評価額の設定は、 「路線価方式」 と 「倍率方式」 の2種類があります。

 

路線価方式
市街地などで 「路線価」 が存在する場合、 「路線価図上の1平方メートルごとの単位×土地面積」 の計算式で算出倍率方式
「路線価」 が設定されていない場合、 「土地の固定資産税×各税務署が設定した倍率」で計算

※評価対象の土地が借地だった場合、これに加え土地ごとに30~40%で設定された 「借地権割合」 がかけられます。

 

固定資産税評価額(固定資産税路線価)の特徴

 

各市区町村の 「固定資産課税台帳」 に記録されている固定資産税・不動産取得税・登録免許税などの課税額を決めるために設定された土地の価格指標です。3年毎に更新されるのが基本ですが、その間に大きく価格が変動している場合には、修正が加えられます。また、評価に変更が行われる年を 「基準年」 と呼びます。

 

実勢価格の特徴

 

ここまで紹介した「公的価格」が、あくまで土地売買の目安や課税額に用いられる指標だったことに対し、「実勢価格」とは実際に土地の売買で用いられる価格です。つまり、買いたい人と売りたい人が合意すれば売買が成立しますので、その価格が時価該当になります。

土地は同じ地域、同じ面積であっても、その形状や方角、接道状況などひとつひとつ条件が異なります。したがって、土地の実勢価格について知りたい場合は、以下のような方法を採ることになります。

 

■周辺地域での過去の取引記録から実勢価格の相場を知る

■不動産広告などに記載されている販売価格を参照する

■周辺地域の公的データ(公示価格、固定資産税評価額、路線価など)から概算する

 

ただし、上記の方法で算出された実勢価格もあくまで「相場」 に過ぎないことを理解し、自分が望む形での取引が行えるよう意識することが大切です。

 

評価額を知るには?

 

各公表時期に新聞やテレビなどでも取り上げられますが、具体的に知るには、各省庁のWEBサイトや以下のサイトで確認ができます。

国土交通省:土地総合情報システム/公示時価、基準地価、土地取引(価格)情報
https://www.land.mlit.go.jp

国税庁:路線価図・評価倍率表、財産評価基準書/相続税路線価
https://www.rosenka.nta.go.jp

資産評価システム研究センター:全国地価マップ/固定資産税評価額、路線価
https://www.chikamap.jp

土地代データ/公示地価
https://tochidai.info

 

気になる土地の相続税評価額に関して詳しく知りたい場合は、国税庁の 「財産評価基準書」 を参照することが可能です。

固定資産税評価額については、固定資産税の納付通知書に添付されている課税明細書で確認できます。その場合、課税標準額は固定資産税の優遇措置により評価額と一致しない場合があるので、必ず価格欄を確認するようにしましょう。なお、市区町村役場に備え付けの固定資産税課税台帳でも確認できますが、納税義務者や借地人といった関係者しか閲覧できません。

気になる土地の実勢価格について把握するために、過去の取引実績を知りたい場合は、国土交通省が公開している 「不動産取引価格情報検索」 を参照することが可能です。今後、自宅を購入する予定の方や既に土地を所有している人は、是非土地の適正価格や税金の目安を知る際の参考にしてみてください。

【HP H 221109-003-01】